フラット面を多用したケースとバンド。バンド中央を貫く天中線が印象的。
段差を多く構えて、込み入った仕上げが繊細さを醸しています。
直線を多用したケースに、鉋〈かんな〉で挽いたような面取り。
白銀比を用いた、整然とした佇まい。屋根瓦を思わせるバンドの連結。
浅い浮き輪状の見返しリングには、高蒔絵のように金が盛られて時字となっています。
文字板は、和の吉祥紋である“七宝”が敷き詰められています。
小菊のような可愛らしいりゅうず。
日本神話に登場する剣〈つるぎ〉のような針のシルエット。
一見、シンプルなドレスウオッチと思いきや、和の要素が多く潜んだデザイン。西洋に由来する腕時計というものに対して、このモデルは、日本文化をデザインに反映して個性を表しています。
直線を多用したケースは、江戸の大工が組み上げたような緻密な仕事を感じさせ、一見無地の白文字板には、飾り和紙のように淡く七宝の吉祥紋が敷き詰められていたり、屋根瓦を思わせるバンドの連結だったりと現代の“TOKYO”ではない、古風な和の装いに包まれています。しかし中身はハイテクな電波時計であるという興味深いギャップ、意外性。ハイテク時計の便利さと、視覚的に表された日本伝統美を同時に楽しむことができます。
この和服を着た精密機械からは、「日本人が時計を作るとこうなるんだ」という静かな声が聞こえてくるかのようです。
フラット面を多用したケースとバンド。バンド中央を貫く天中線が印象的。
段差を多く構えて、込み入った仕上げが繊細さを醸しています。
直線を多用したケースに、鉋〈かんな〉で挽いたような面取り。
白銀比を用いた、整然とした佇まい。屋根瓦を思わせるバンドの連結。
浅い浮き輪状の見返しリングには、高蒔絵のように金が盛られて時字となっています。
文字板は、和の吉祥紋である“七宝”が敷き詰められています。
小菊のような可愛らしいりゅうず。
日本神話に登場する剣〈つるぎ〉のような針のシルエット。
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レトロフューチャー
70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。 この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。 時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。 15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。 加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。 特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。
光を感じる時計
漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。 文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。 また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。 アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。
自然の生命
CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。 ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。 パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。 ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。
最小認知要素から 装飾するプロセス
「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。 ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。 ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。 ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から 作られた。 本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。 ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。