見えなくする

CITIZEN ACE

https://ms.citizen.jp/assets/084_11-07_シチズンエース_01

 この時計は鉄道員が使う時計として製造されたもので、社会インフラの縁の下の力持ちとも言えます。そして、そのような公共交通のインフラを支えるべく、実用性に十分配慮されています。時間が合わせやすいよう、12 時位置で秒針が停止する機能を持ち、また視認性(時間の見やすさ)には特に配慮がなされています。
 そのため、視認性に深く関わる文字板以外の要素は主張が抑えられています。例えば、ベゼルの細縁・薄縁形状とその面構成、ラグの面構成、ケース下部の刈り上げなどです。
 ただし、ただ存在感を消すのではなく、全体としての調和=美しさはしっかりと残されています。本当に見せるべきところを見せ、それ以外は美しく見えなくする。そのような意図がこの時計には含まれているように思います。

084_11-07_シチズンエース_0236.6 mmと意外と小さいですが、細縁で見切り径が広いため、見た目では小さく見えません。ちょうど良いサイズ感かつ広々とした文字板で高い視認性を保っています。

084_11-07_シチズンエース_03ボックスガラスとボンベ文字板、曲げ針の効果でベゼルの高さが抑えられています。正面も細縁と相まって、より存在感をなくし、文字板の視認性を引き立たせています。

084_11-07_シチズンエース_06ラグの上面がややベゼルにかぶさる構造。これによりベゼル上面のミラー仕上げを綺麗に磨くことができます。

084_11-07_シチズンエース_09ベゼルは3 面構造で、上面にやや傾きがあります。上から見ても横から見ても細縁、薄縁を強調するミラー面。(真ん中の斜面が消えるような効果)

084_11-07_シチズンエース_04ラグの付け根から先端に向かってテーパーしていく先カン。華奢さと安定感のバランスをとる効果があるように思われます。

084_11-07_シチズンエース_07平面2面構成のラグ。面取り効果で細く見えますが、しっかりとした安定感もあり、すっきりとした印象と両立しています。

084_11-07_シチズンエース_10ボックスガラスにより、ベゼルを薄くし、文字板を上に持ち上げることで視認性が向上しています。横身のぷっくり感も愛着を感じさせます。

084_11-07_シチズンエース_05ケースの下斜面を深くかり上げた形。ケースをより薄く、見えなくする効果。

084_11-07_シチズンエース_08時分針は先端に向かって逆アールで細くなっていく形状。消えるか消えないかぎりぎりという感じの精度感がある。分針と秒針は先端が文字板のカーブに合わせて曲がっており、時字と切り分に追従。見返しを低く抑える構造的役割もあり、総じて視認性を高めています。

084_11-07_シチズンエース_11均整のとれたレイアウト。白黒比が気持ちよく視認性が高い文字板。ガラスとの距離が近くなるボンベ形状は、精度が求められる時計として機能性の要となる文字板をひきたてます。

WATCH

CREDIT

RELATED

https://ms.citizen.jp/assets/070_10-02_カリキュレーター_01

レトロフューチャー

 70 年代、時刻表示の新しい表示方式であるデジタル表示が開発されました。それは当時、近未来時計への期待を感じさせる表示機能でした。  この時計はデジタル表示の有効性を活かし、カリキュレーター(電卓)機能を初めて腕時計に追加するという発想のもとデザインされました。  時計と電卓機能の共有化を成し遂げた国産初の腕時計は、中央に表示モニター/外周に放射状に23 個のプッシュボタンを配置するという個性的なデザインスタイルで表現されています。腕時計のケースの基本である丸形状での表現をやり遂げたことが腕時計デザイナーならではの発想だと感じます。  15 度刻みに配置されたプッシュボタンの人工的な輝き。ケースとバンドの凹凸の無いシンプルなライン。これらは従来の挽き加工によるものであり、厚みのあるケースとクールなデジタル表示の組合せは新旧技術のアンバランスなレトロフューチャー感を生み出しています。  加えてこの初期モデルは金色で統一され、外装には各部材に異なる質感を持つ金色を巧みに使い分け、派手な色調にも関わらず品のある趣を醸しだしています。  特徴のある操作ボタンのレイアウトはスタンダードとはなりませんでしたが、先陣を切ったカッコよさ、誇りを感じさせます。

https://ms.citizen.jp/assets/100_12-08_L 漆玉_01

光を感じる時計

 漆玉、ダイヤモンド、スモークガラス。それぞれの光の反射が、光源や時刻によっても違った表情を見せる奥行きのあるモデルです。ケース形状や文字板デザインがシンプルだからこそ、ディテールの美しさが映え、機械的な時ではなく、光が映し出すゆるやかな時を感じることができます。  文字板に時字はないものの、時分針は見やすく、時計としての機能を併せ持つブレスレットという印象です。  また、漆をいわゆる伝統的な見せ方ではなく、モダンなデザインで時計と融合させており、伝統技術の現代的な表現も楽しむことができます。  アシンメトリーな形状ながらも着けやすく、モダンなジュエリーを身につけているような特別感があります。

https://ms.citizen.jp/assets/099_12-07_L ムービングダイヤ_01

自然の生命

 CITIZEN L には自然の中にある形状や光にインスパイアされたデザインテーマが多く、本モデルも「朝露」がテーマになっています。  ケース上の3 粒のダイヤがケースカーブに沿ってサラサラと滑らかに動き、時字が文字板上に散るように配置されている様子が、何も知らずにこの時計を見たとしても、自然の情景を思い起こさせるようなストーリーが秘められているデザインです。  パーツを見ていくと、文字板パターンや時字の配置、りゅうず位置、ケース形状など非対称な部分が多いにも関わらず、それぞれが均整の取れた位置に収まっているため、違和感や着けづらさはありません。非対称なデザインによって、自然の生命感を思わせるリズムや動きが生まれ、画一的な時間ではなく、ゆったりとした自然の時間を感じさせます。  ダイヤモンドが多く使われておりジュエリー感のある時計ですが、時字の配置やケースとバンドの隙間の取り方に抜け感があり、普段使いも可能なデザインテイストになっています。

https://ms.citizen.jp/assets/098_12-06_エクシード ユーロス_01

最小認知要素から 装飾するプロセス

 「バンド・針・丸」これは人々が腕時計と認知できる最小構成要素です。  ◆腕時計は、バンドがあっての“腕”時計である。  ◆腕時計は、針があっての腕“時計”である。  ◆時間は、繰り返される天体の周期(丸)から   作られた。  本モデルは、この3 つの要素に焦点を当てた「腕時計」のデザインのお手本のように思います。これらの3つの要素に豪華な装飾を施すことで、他の要素との主従関係をはっきりさせています。  ユーザーが求める「腕時計らしさ」と、ユーザーが満足する「装飾品としての美しさ」を兼ね備えた、全ての腕時計のお手本ではないでしょうか。