プロジェクトのきっかけ
近年、伝統工芸品における職人の後継者不足が深刻な問題となっています。CITIZENは100年以上にわたり、市民のためにものづくりを行ってきた企業として、次の100年に繋がるものづくりの才能を支援したいと考えています。また、和紙や漆を用いた文字板、西陣織のストラップなど、伝統工芸を取り入れたモデルを多く発売しています。私たちは、伝統工芸と関わる企業として、日本の伝統を継承・保護し、さらなる進化と創造性を引き出す支援を行いたいという思いから、このプロジェクトを始動しました。
KOGEI
伝統工芸は「KOGEI」という言葉で表され、その革新が目覚ましいものとなっています。一般的に「工芸」は手作業で作られる美術品や実用的な製品を指しますが、「KOGEI」はアートやデザインとの融合を強く意識したものです。近年、伝統工芸の技を持ちながら新しい表現を求める作家が増えており、このプロジェクトでは、技法を駆使し素材を扱いながら新しい表現を追求する若手アーティストに注目しています。
プロジェクトの道のり
このプロジェクトには、特別サポーターとして伝統工芸× ファッションブランド「HIRUME」の総合プロデューサーであり、CITIZEN Lのブランドアドバイザーである生駒芳子さんにご参加いただき、プロジェクトを進めていきました。まず、生駒さんとデザイナーを含めたプロジェクトチームで候補者の選出を行い、4名のファイナリストが決定しました。ファイナリストの選考基準は、作品のクオリティ、そして当社と親和性のある「Better Starts Now」の精神を体現するものづくりを行うことです。最終的な支援者2名の選出は、本社社員全員の投票によって行いました。社内で初めての試みとして作品展示を行い、実際に作品を見た上で受賞者を決定しました。
ファイナリスト 友禅作家 石井 佑宇馬さんの作品
ファイナリスト 加賀繍作家 横山幸希さんの作品
ファイナリスト 陶芸家 金田 萌永さんの展示風景
ファイナリスト 漆芸家 間瀬 春日さんの作品
展示では、作品の存在感や密度、細部へのこだわり、素材の美しさなど、写真では感じることのできない作品の魅力を体感することができました。
腕時計という小さく緻密な製品を扱う会社ならではのことか、細かいところまで見入っている社員が大勢いました。作家が作り出す表現や造形に対して、どのように作ったのか興味が尽きないようです。若手作家が作り出す完成度の高い作品は、分野は異なりますが、ものづくりに携わる社員にとって大きな刺激となりました。
お披露目会
2025年3月6日HIRUME Art Laboratoryで授賞式および応援作家のお披露目会を行いました。当日はトークセッションが行われ、生駒さん、受賞作家の石井さん、金田さんと共に自身の制作やこれからのKOGEIについての話で盛り上がりました。
金田さんは、青の繊細な模様が印象的な作品を制作しており、幼少期に海辺の街で暮らした記憶や、趣味の気球から眺める景色など、自身の体験が現在の作品に影響を与えているそうです。特に、心を動かされる瞬間に深く結びついている色が青であるとおっしゃっていました。
石井さんはベルギーで交換留学中のためオンラインでの参加でした。異国での制作環境の中で、日本の工芸が持つ手仕事の繊細さや、日本で育まれた工芸の美意識に改めて気づいたとお話しされました。
また、お披露目会のあと1週間は同会場で作品展示も行われました。偶然にも、今回の受賞者は青をメインとした作品を製作しており、会場は青の世界に包まれました。
動画
今後は、受賞作家とのワークショップや創作活動を紹介する動画の作成を通じて、伝統工芸を広く知ってもらうための普及活動と作家のPRを行っていく予定です。この応援プロジェクトは、伝統工芸の担い手を長期的に支援する計画であり、第二回目に向けて動き始めています。引き続き、ぜひご注目いただければと思います。