日本のものづくりが息づくワールドタイム

ATTESA DIRECT FLIGHT

https://ms.citizen.jp/assets/AT_H6_1

Cal.H610は簡単なりゅうず操作で選択した都市の現地時刻を表示する機能を備えます。電子制御の利点を生かした新しいスタイルのワールドタイムは、機械式では実現が困難な機能をスマートに表現しており、そこに私は日本メーカーらしさを感じました。そのことから「日本のものづくりから生まれたワールドタイム時計」というテーマでこのモデルのデザインをスタートしました。

ワールドタイムイメージ りゅうず操作でディスクを回転させて都市を選択し現地時刻を表示

光発電電波時計としての表現

デザインをするにあたり、都市の風景をイメージさせるような人工的で直線的な光の写り込みや反射といった光の表情をモチーフにしました。その背景には、光発電電波時計の電波受信や光の受光といった特徴が持つ「受ける」というイメージだけではなく、半永久的な光の力を用いて時間を提供しつづける「放つ」というイメージをもっと視覚的にアピールしたいという強い思いがありました。光発電電波時計は従来のクォーツウオッチのデザインよりも制約が多く、当時、自分の中でどこか守りに入るようなデザインになりがちだと感じていたためです。

都会 光 直線 高層建築の直線的な人工美/直線的な光の輝き/レイヤー感/スピード感のイメージ

光をビジュアル化した文字板

文字板では、光発電時計の性質である半永久的に供給される光を動力源とすることをアピールしたいと思いました。通常、光発電時計の文字板はその下に隠されているソーラーパネルに受光させるために、ベースとなる素材に透過素材である樹脂を用います。ただ、その素材だけでは時計らしい金属的な輝きの表現が難しく、インデックスやリング部品等に金属パーツを用いることで宝飾的な輝きの表現を補います。その時、金属パーツは光を透過しないため、文字板のベースとなる「光を透過させる面積」と金属パーツの「輝きを持たせる面積」のバランスをどのように両立し表現するかが鍵となります。先ほどクォーツウオッチのデザインよりも制約が多いと書いたのはこのような理由です。

このハンデを逆手に取れないか検討を続け、厚みにより濃淡が異なるという樹脂の特徴を生かすことで文字板の積層感と陰影を表現し、輝きを放つ金属部品を光に照らされる建築物に見立てることで、都市的な高層建築がもたらす陰影を表現するというテーマに至り、日々変化していく状況に対峙するビジネスマンを支えるツールとして、華やかさとスマートさを文字板上に表現したいと考えました。

12光を動力源として吸収し(受けとり)、電子制御によって導き出した情報を表示する(放つ)ツールであることを陰影/輝きを用いて強調した文字板

チタ二ウム外装開発へのこだわり

時計外装にチタ二ウムを採用しはじめた70年代初頭当時、ケースは型押しプレスでの形状しか表現出来ませんでした。粘りのある性質であるがゆえに切削時に削りカスが刃にまとわりついて支障をきたすためです。鏡面仕上げやヘアライン仕上げの表現も難しく、基本的には砂地のツヤ消し仕上げのみという状態でした。それは腕時計という装飾品としての表現の制約を意味しましたが、シチズンは軽さや金属アレルギーフリーなどの腕時計素材としての本質的な相性の良さを見据え、美しい仕上げと色調表現の多彩さを目指し開発を続けてきました。その結果、現在ではほぼステンレスの加工と変わらない条件でデザインすることが可能となり、ATTESAブランドを象徴する素材となっています。

Ti外装加工新旧左:70年初頭に初めて量産化したチタニウムモデルX8。プレス型押し、砂地仕上げの単純な形状右:加工条件はステンレスと遜色がなくなり表面処理技術も向上。鏡面仕上げが可能となり、装飾品としての表現の可能性が広がった

 

どう見えるか/感じさせるか

外装となるケースとバンドは直線を組み合わせた面構成で人工的な美しさを表現しました。光がもたらす輝きや反射のイメージです。開発の継続によって得られた加工技術を駆使し、チタニウムのイメージを一新させるようなシャープな外観を心掛けました。スポーティービジネスウオッチとしてのスマートさを印象付ける試みも行いました。

01 Yokomi例えば、ケース側面の立ち上がり面(上図赤色の部分)の幅を狭くなるよう設定しています。そうすることでケースを薄く感じさせることができるためです。私は腕時計は実寸法ではなく、実際に身に着けた時に「どう見えるか/感じさせるか」の直観的な印象が重要だと考えています。

02 Hikari Kouka加えてガラス裏面にブランドロゴや切分を印刷することにより、文字板面に影を落とすという光の効果を感じ取れる演出も加えました。

バンドは、ケースからの流れを受け止めるべく線と面の構成を用いました。コマ部品を分割し、一体型では不可能な仕上げの描き分けを行い、高精度な面品質を表現しました。中央のコマと両端のコマのヘアライン仕上げの方向を変え、同じ色調に見えないように演出し、ここでも光の効果を感じ取れるよう配慮しました。

03 Offsetまた、バンドの存在感を強調させる為、ケースのラグよりも一段高くなるように設定しました(上図)。ただ、このままではバンドのみが強調されたアンバランスな外観となるため、ケースとバンドのコマをつなぐ箇所に円柱パーツを追加しました(下図)。

04 Maru円柱パーツの丸みがケース上面とバンドコマ上面の高さのギャップを緩和し、そのことにより、バンドの存在感の強調と全体の一体感を高めることを両立しています。

3Dによる事前確認

ケースとバンドが組み合わさった完成状態で3Dの形状を確認する際、私は斜めから見た時のバランスを重視します。なぜなら腕時計の使用時は正面から見る場合よりも斜めから見る場合のほうが多いからです。各パーツの形状や、鏡面(輝き)とヘアライン(ツヤ消し)の占める面積のバランス等をあらゆる角度から確認します。そのようにして、「光」をモチーフにした外装のデザインを仕上げていきました。

P9 01装着時によく見られる角度で「形状」「仕上げ」「色調」の3つのバランスを確認

06 Kakiwake赤:鏡面仕上げ
青:縦ヘアライン仕上げ
緑:横ヘアライン仕上げ
黄:縦ヘアライン仕上げ(側面)
水色:ホーニング仕上げ

メンテナンスフリーのパートナーとして

このモデルは定期的な電池交換の必要が無く、メンテナンスフリーで環境にも優しい腕時計です。光によって自ら電⼒を作り出し、低消費電⼒で駆動するという機能は、「スタンドアローンで動作しつづける道具」という点で、ゼンマイを巻いて作動する機械式腕時計と共通点があり、日本の時計メーカーならでは機能美と機械式時計にも通ずるロマンとを併せ持っています。単なるスポーティーウオッチとは異なり、「ビジネスツールとして機能を使いこなす満足感とスマートさ」をコンセプトとし、日々汗をかいて歩みつづける人たちのパートナーとなるような存在になって欲しいという思いを込めてデザインしました。

スクリーンショット 2025 06 03 131106

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