強さと愛嬌

Design Competition 2023 | CQ CUSTOM

https://ms.citizen.jp/assets/cq_custom_01

2024.11.12

グローバル化と情報化社会の成熟によって、現代は多数の人と情報が行き交う複雑な時代を迎えました。そして、パンデミックや紛争など、先の見えない不確実性はさらに高まりつつあります。そのような状況の中で、結局のところ私たちにできるのは、ただひたすらに今を生き抜くこと、そのための「強さ」を自ら持ちつづけることではないかと考えました。そして、そのことをサポートするある意味サバイバルツールのようなものを時計でデザインしてみる、というのがこのモデルで試してみたかったことになります。

一方で、シチズンらしさについても考えました。シチズンらしさを探るデザインソースプロジェクトを通して私がその核心にあると思うのは、ツノクロノに代表されるような、ある種の「愛嬌」です。プロジェクトを通して、シチズンデザインの根底には「繊細だけど大胆」というような「矛盾しがちな概念の共存」があるという気づきが得られたのですが、それならば、今回私は「強さと愛嬌」という一見相反するスタイルを調和させて、シチズンらしいユニークなバランス感覚を表現したいと思いました。

Cq Custom 02デザインのヒントとしたのは、人類最古の道具である石器です。これは最古のサバイバルツールでもあります。石器の、その粗削りな稜線が生み出す力強さと陰影の美から造形のインスピレーションを得ています。

そしてもうひとつ、車のSUVやオフロード車もデザインのヒントの一つとなっています。強さと愛嬌を併せ持つものの身近な参考例として時計でSUVを作ったらどうなるか、ということを構想しました。

名前はCQ CUSTOMと名付けました。シチズンではアナログとデジタルの両方の表示を持つムーブメントをCQ(=コンビネーションクオーツ)と呼びます。あらゆるシーンに必要とされる機能を追加できるようにシチズンの代表的なCQ「Cal.U680」をベースにしたカスタムモデルを想定しています。また、ケースには軽量さとタフさをあわせ持つスーパーチタニウムを採用しました。

形のベースは、石器のようにひとつの石から削り出した原始的な造形としつつ、歴代のマスターピースの中からいくつかのモデルをデザインソースとして引用し、それらに含まれている要素を複合的に組み合わせたデザインになっています。

以下に、いくつかの要素を紹介してみたいと思います。

①アシンメントリー

Cq Custom 03Cq Custom 04一番目はPROMASTER AQUALANDのアシンメトリーな造形です。非対称形が生みだす揺らぎが翻ってアイコン的な強さを表現しています。また、腕馴染みに配慮し、大きくなりすぎないサイズ感の中で造形のバランスを探りました。

②直線的構造美

Cq Custom 05Cq Custom 06二番目はSOUND WITCHの直線的な造形です。ムーブメントが持つ機能性を、直線的な構造美によって表現しています。また、三時位置の立ち上がり面には石碑のような刻印を施し、使い勝手への配慮であるのと同時に視覚的なアクセントとしました。

③張りのある面

Cq Custom 07Cq Custom 08三番目はPROMASTER SKYHAWKの張りのある造形です。ほとんどの面が大きな曲面になっており、完全な平面がほぼ存在しない面構成となっています。直線的な構造美の中に、やや張りのある要素を加えることで、親しみ深さと安心感を加えたいと考えました。

④シンプルかつ精密

Cq Custom 09Cq Custom 10四番目は初代電波パイロットのシンプルで緻密な文字板レイアウトです。夜光インデックスとともに複雑な要素を出来るだけシンプルに、かつ精悍に配置することで、視認性の高さと、Cal.U680の密度感を活かした緻密な表現の両立を図りました。

⑤愛嬌

Cq Custom 11Cq Custom 12そして最後にボイスメモの愛らしいキャッチーさです。9時位置の「SUPER TITANIUM」の彫り込みや、ケース上面の樹脂差しと文字板印刷のワンポイントカラーなどの細部のこだわりによって、印象的な個性を持たせたいと考えました。

Cq Custom 13これらの要素を組み合わせることで、使用者の今を生き抜く強さを引き出し、ドラえもんのような愛嬌もある、そんな身に着ける人にとっての「頼りになる相棒」となる存在を目指しました。

Cq Custom 14Cq Custom 15デザイン提案時資料

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